2022/03/03 00:44



あるモノ・コトに対して「好き!」と言い続けると何かしらの不思議な力がはたらいて、思わず手が届きそうになった経験が大なり小なりありません?

今回はそんなお話。

美大のデザイン科に通っていた僕は、授業の一環で裸婦(らふ)デッサンを描いた事が1度だけある。

モデルの女性が(モデルの為の)休憩時間にローブを1枚羽織った状態で皆の描いた絵を見て周っていた。
当然、僕のところにもやってきて描きかけの絵を前に座る僕の後ろから覗き込むように見てきた。
僕はイヤホンをしている。

当時は岡林信康やはっぴいえんど、友部正人や遠藤賢司などの日本のアングラフォークにハマっていたのでそれらのいずれかをCDウォークマンで聴いていた。

けっして美人ではないが細身でスタイルは良く年齢はたぶん僕より10個くらい上だったそのモデルさんがゼスチャーで「何を聴いてるの?」とやったので、僕はイヤホンを外して前述のいずれかを答えた。

するとモデルが
「私、渡さん(高田渡)の京都の実家の電話番号知ってるよ。」
と言うではないか!

高田渡といえば、名盤「ごあいさつ」を世に出したアングラフォーク界のレジェンド。※はっぴいえんどが演奏を全面サポートしたこのデビューアルバムは、Andy Warholが手がけたTHE VELVET UNDERGROUNDの1st"バナナ"を湯村輝彦がオマージュしたジャケであまりにも有名。
当然のように僕も愛聴していたので「京都の実家の電話番号」という精神的にも近いんだか遠いんだかよくわからない部分は直ぐには耳に入らず「高田渡」というワードで意気投合して音楽の話でさんざん盛り上がった。

そして授業の終わりに電話番号を書いた紙を渡されたのだ…

つづく